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本エッセイは、株式会社ジェーシー・コミュニケーション代表の山本が、世界で体験してきた国際交流のエッセイ集です。49ヶ国/9年分の旅行や海外在住体験がつまってます。

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第四章 バックパッキングⅡ

ひょんなことで寄り道をすることになる


旅行から帰るとまた学生生活が待っていた。毎日授業へ出て放課後は友達と喋りながら会話力を伸ばしたり、図書館で勉強して語彙を増やしたりした。平和な学生生活の日々が過ぎていくにつれスペイン語は着実に伸び、会話力がつくにつれて友達の数も増えていった。

そして一学期の四ヶ月はあっという間に過ぎていき、学期の終わりはまた旅の始まりを意味した。前回の旅行を始めた時点ではあまりモティベーションがなかったのだが、今回はどういった旅行ができるか期待が膨らんでいた。最初はチリと同じ言葉を喋り同じような文化も持っている国を旅行してもあまり刺激が無いだろうと考えていたが、それが間違いということが分かったし、逆に言葉が分かる事によっていろんな現地の人と会話が出来てそれが面白かった。

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今回も最初はサンチアゴから北上することから始まった。チリ北部までは前回と同じ道を通るのであまり刺激は無かったのだが、夜行バスの窓から見える星屑は前回と変わりなく私の目を楽しませてくれた。アリカという国境の町で美味い海産スープを食べ、国立公園を訪れた後、そのままペルーの首都リマへ向かった。

ボリビアもそうだがペルーの街を歩いていると、チリと違ってこの国は第三世界の国なのだなと思わせられる事が多い。リマの街はサンチアゴほどきれいではないし、雑多な印象を受ける。モザンビークなどアフリカの国でもそうだが、一部の発展途上国の特徴として日本の中古車が街を走っているというのがある。日本で車検費用を払えなくなった中古車が輸出され、○○○幼稚園や×××水産とかいうロゴが車体に残ったまま街を走っている。ペルーの道路でも日本語のロゴが多く見られ、百パーセントスペイン語の世界で文字通り日本語が行き交っている様は面白い光景だった。

リマで泊まったホテルも典型的なバックパッカー宿で、寝室は共同で上の階を歩く人の振動のために屋根から埃がベッドに落ちてくるような所だった。それでも宿泊客はほぼ若い外国人の旅行者のみで、ホテルの中にある食堂のメニューは全て西洋食だった。その食堂のテレビではアメリカやヨーロッパの衛星放送が四六時中流されていたし、またテーブルではバックパッカー達が情報交換していた。

そんな西洋世界のなかで一人だけチリ人の客がいた。カルロスという名前の彼とは寝室が一緒で、同じサンチアゴに住んでいたという事もあり話が盛り上がった。話をよく聞くと彼は厳密な意味での旅行者ではなく、アクセサリーの製作と販売をしながらその収入で旅行しているとの事だった。彼はアクセサリーを加工するために必要な材料や道具はもとより小型のプロパンガスまでチリから持ってきていた。材料を熱して加工する時に使うのだとういう。彼はエクアドールの海岸沿いにあるモンタニータという村を目指しているという。小さな村だがのんびりしていて宿代も安い。彼はそこに数週間滞在して道端でアクセサリーの加工・販売をやり、疲れたら浜辺で日光浴でもしながら生活し、お金が貯まったらまた別の場所に移るらしい。彼に一緒に来ないかと誘われて心が動かされた。彼はモンタニータには何度か行った事があり、彼のようにアクセサリーや工芸品の加工・販売をやりながら旅費を稼いで旅している人がたくさんいるという。彼等がどんな人間達でどんな生活をしているのか興味が出てきた。どうせ北上する予定だったのでモンタニータは進行方向にある。寄ってみるのも悪くない。

一銭の金も無駄遣いしたくない彼は次の日にはもうモンタニータに向けて発つ予定らしかった。私はもう少しリマを見たかったし、ペルー北部のトルヒージョという町にある遺跡も見たかったので、彼とはモンタニータで会うことにした。その村にアチスという食堂があり、そこにいるイネスというおばさんを訪ねれば彼の居場所は分かるという事だった。それだけ決めると我々は再会を約束して別れた。

その後、私はリマをもう少し見て歩き、トルヒージョの遺跡を見学したがこれといって面白い所ではなかったので、一週間もしないうちにモンタニータの村に向かっていた。トルヒージョの町を出てモンタニータに着くまで二十四時間ほぼバスに乗りっぱなしで、乗り換えも六回くらいあった。さすがに疲れたが、エクアドール国境のバスターミナルで食べた現地風炊き込みご飯がむしょうにおいしかったのを覚えている。夜中二時の夜食だった。

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